摂生が裏目に…「新型栄養失調」

見た目の体型が痩せているわけでもなく、本人は普通に食べているつもりでも、栄養失調に陥る人が近年増えているそうです。「がん」「心臓病」「脳卒中」の発症を恐れて、コレステロールや脂肪の摂取量を抑えようと、卵や肉類などの動物性食品を食べることを控えている人が発症するということです。こうした栄養失調は「新型栄養失調」と呼ばれ、国民健康・栄養調査によりますと、70歳以上の5人に1人が該当するということです。このように事態を深刻化している背景には、「粗食のすすめ」といった科学的知見に乏しい情報が広がり、鵜呑みにされていることが一因であるように思われます。

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「栄養失調」という言葉を聞きますと、飢餓によりやせ衰えた状態をイメージしてしまいますが、「失調」とは調和が失われているという意味なので、摂取した栄養素に過不足があって健康状態に支障が現れた場合、それは栄養失調に該当することになります。
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ダイエットのために食事制限をする若い女性や、メタボ対策でカロリーやコレステロールを抑えようと内容的に偏った食生活を続ける中年男性、そして健康にあまり良くないという思いこみから肉や卵などをあまり食べない高齢者が「新型栄養失調」に陥りやすく、特に高齢者は老化に伴って体のたんぱく質が減少しているため、食事からの補充が十分に行われないと栄養失調になりやすいと指摘されています。「新型栄養失調」の症状は、血液中のたんぱく質である血清アルブミンの量が低下して、体がだるくて思うように動かなくなり、重症化すると心臓疾患や寝たきりになるリスクが高まるとのことです。
 人間の血清アルブミンの基準値は、3.8~5.2g/dlで、3.8g以下になると栄養失調と判定されます。アルブミンは、アミノ酸のみから構成される単純たんぱく質の代表的なものの一つで、血液の血漿に含まれる血清アルブミンには、血液中の水分を保持して血液を正常に循環させる(浸透圧の維持)機能や、さまざまな物質と結合する力が強いことから、カルシウムなどの無機質や脂肪酸,酵素,ホルモンなどと結合して、これらを必要としている目的部位へ運搬する機能などがあります。なので、アルブミンが不足すると体の様々な機能が正常に働かなくなってしまうわけです。
 アルブミンが不足しているのなら、アルブミンをそのままサプリメントなどで摂ればよいのではと思われがちですが、アルブミンは分子が大きいためそのままでは吸収することができません。消化酵素によってアミノ酸あるいはジペプチド(アミノ酸が2分子結合したもの),トリペプチド(アミノ酸が3分子結合したもの)にまで分解されてから吸収されますが、その後体内でもとのアルブミンに合成されるとは限りません。よって、アルブミンのみならず体内の様々なたんぱく質の合成に必要なアミノ酸を確保することを考えたならば、多様な食材から多種のたんぱく質を摂ることの方が理にかなっているといえるでしょう。そしてその中心となるのが一般に「良質のたんぱく質」と言われているものです。良質のたんぱく質とは、人間が体内で合成することのできない必須アミノ酸(8種類)をすべて基準値以上含んでいるたんぱく質のことで、具体的には肉や魚,卵,牛乳,大豆などに含まれているたんぱく質です。
食事の内容を決める際には、このような良質なたんぱく質を含む食材を使った料理を一品選び、汁物や付け合わせから野菜や芋,豆,海藻,きのこなどが摂れるように、たんぱく質以外の栄養素のバランスにも配慮しながら食事を組み立てていきましょう。