果物を食べない日本人

先月の末、長野市に在住している叔母から「シナノゴールド」という黄色いリンゴが届きました。ジューシーで歯ごたえもあり、とても美味しいリンゴです。叔母は毎年12月には「フジ」も贈ってくれるので、我が家では秋から冬の間は、リンゴを食べるのが日課になっています。そんなに食べ続けても飽きないのは、さっぱりとした自然の味だからなのでしょう。
 ところが先日、リンゴをかじりながら新聞に目を通していましたら、コラムに「果物離れ」に関する記述が掲載されていました。記事によりますと、日本人が果物を食べる量は先進国の中では最低の水準で、生で食べる量は減り続け、リンゴも皮をむくのが面倒だからという理由で苦戦を強いられているということでした。
 そこで、日本人の果物摂取状況は実際どのようになっているのか、資料を探してみました。下のグラフは、昭和50年(1975年)から平成22年(2010年)までの35年間の果物摂取量の推移を示したものですが、昭和50年当時は1日200g近くあった摂取量が徐々に減少し、平成22年には101.7gとほぼ半減していることがわかります。グラフの右上にも記載されていますが、国の食事バランスガイドでは1日可食部で200gの摂取を勧めているにもかかわらず、実態はそれから乖離しつつあるのがわかります。

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次のグラフは、果物の年間消費量(1人あたり)の国際比較を示したものですが、欧米の国々の平均をおよそ130kgとすると、日本の消費量はその半分にも満たないことがわかります。

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日本人が果物を敬遠する理由のひとつに「皮をむくのが面倒」ということが指摘されていましたが、では、生の果物の代わりに手間のかからない果汁100%のジュースを飲んだとしたら、栄養価にはどのような違いがあるでしょうか。リンゴを例にして見てみましょう。1回に食べる量としてリンゴを1/2個(可食部130g),ジュース1缶(280g)と設定して比較した結果が下表です。

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リンゴは生で食べる場合、実が固いのでしっかり噛む必要がありますが、ジュースだと簡単に飲めてしまいます。それが摂取量の差となり、ジュースの方がエネルギー,炭水化物(糖質)ともに多くの量を摂取することになります。さらに注目したいのが食物繊維量です。生のリンゴを食べればペクチンなどの食物繊維を摂ることができますが、ジュースではほとんど摂ることができません。食物繊維は、食後の血糖値の上昇を抑制する効果があるので、GI(Glycemic Index:血糖上昇指数)という見地からも、生のリンゴを食べた方が体にやさしいといえるでしょう。ジュースなどの加工品は、果物が持っている甘さや香りなど、人間が好む部分を取り出したり強調したりして作られているので、自然物が本来持っているバランスを欠いており、摂り方によってはそれが人間の体にマイナスに作用することがあります。もちろん、生の果物も食べ過ぎたりしてはいけませんが…。
 日本人の果物摂取量が少ないのは、東アジアと欧米の食文化の違いが背景にあるのかもしれませんが、「日本人の食が欧米化している」と言われて久しいにもかかわらず、果物摂取に関してはじりじりと後退しているということは何を意味しているのでしょうか。肉やアブラのこってりした風味やスイーツの甘味にはあっという間に虜になったのに、自然の味わいや手間をかけて食べるという人間業を捨てるのには未練はないということなのでしょうか。
 果物の「果」という字には「成し遂げる」という意味があるそうですが、植物の生長による成果を味わい、季節の移り変わりを楽しむ感性も、体の健康と共に大切にしたいものです。