米の「うまい話」

今月に入って、お待ちかねの新米が出回り始めました。我が家でも早速購入して食べ
てみましたが、やはり新米の味は格別ですね。
ところが近年、日本人があまり米を食べなくなり、いわゆる「米離れ」という現象が起こっていると指摘されています。下図(国民1人に1日あたり供給されている熱量がどのような食物でどのくらいまかなわれているかを示したグラフ)を見ますと、確かに1日の供給熱量に占める米の割合は、昭和35年には48%程度であったものが、昭和40年頃から低下の一途を辿り、平成22年にはおよそ24%と半減していることがわかります。また米の減少幅を埋めるようなかたちで、畜産物(獣鳥肉類,卵,乳・乳製品)と油脂類の供給熱量に占める割合が大幅に増加していることが見て取れます。

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このほか、今年の8月に総務省が公表した家計調査の結果を見ましたところ、1世帯(2人以上の世帯)あたりの1年間(2011年)のパンの購入額が2万8321円なのに対して、米の購入額は2万7425円とパンをわずかに下回っていました。そして、この傾向は今年も継続している状況です。
 米離れが進む背景としましては、食生活の欧米化や多様化,簡便化,外部化はもとより、さらに家族がそれぞれ異なるものを食べる個食化、少人数世帯の増加など様々なことが考えられるわけですが、米を中心としたいわゆる「日本型食生活」が崩れることによって最も懸念されるのは、日本人の健康への悪影響です。
 私は高校生に食生活についての指導をしていますが、栄養素・栄養,食品,調理という一連の学習のまとめとして、各自に1日分の食事を組み立ててエネルギー量や各栄養素量を算出させ、それを食事摂取基準と照らし合わせて改善点をピックアップした上で、できるだけ基準に近づけるよう調整をするという内容の授業を行っています。すると大多数の生徒が、過剰な脂質・たんぱく質・食塩の削減に四苦八苦します。そして、そのような生徒の献立には、たいがい主食にパンや麺類が入っています。では、なぜ主食がパンや麺だと栄養素摂取のバランスがとりにくいのか、下表を参考としてご覧下さい。

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ご飯は米に水を加えて炊いただけのものですが、パンや麺類は小麦粉と水のほかに油脂や食塩を加えて作られているので、上記のような差が出てきます。実際の食事の場面では、パンにはバターやマーガリン,ジャムなどを付けて食べるケースが多いでしょうし、麺類はつゆやスープなしでは食べませんよね。つまり脂質や塩分を上乗せして食べてしまうわけです。さらに副食やトッピングも、パンにはハムエッグ,そばやうどんには天ぷら,中華麺にはチャーシューといった具合に、油脂の多いものを取り合わせがちです。
というわけで、パンや麺を主食にした場合、自分では普通に食べているつもりでも、予想以上に脂質や塩分を摂ってしまっているのです。その点、ご飯は風味の点でも栄養素の点でもプレーンな主食なので、副食も焼き魚や煮物などのあっさり系のものからハンバーグや豚カツなどのこってり系のものまで、幅広い取り合わせが違和感なくできます。
 ご飯を炊くのが面倒ならば、無洗米でひと手間省くことができますし、時間がないとか少人数世帯で一度に食べきれないなどの場合は、茶碗一杯分ずつ入る専用容器に入れて冷凍しておけば、炊飯の手間も省けますし、ご飯を無駄にすることもなくなります。そして、経済的には製造コストがかかっていない分、米の方がずっとリーズナブルですし、社会的には米を消費することで食料自給率を多少なりともアップさせることができるかもしれません。
世間では「うまい話にご用心」などといいますが、米がいろいろな意味で「うまい」のは信用していただいてもよろしいかと思います。