国際的ながんのリスク判定について

 がんは発見が遅れると致命率が高く、さらに生活習慣に影響を受ける部分が大きいという特徴があることから、生活上の何が予防につながるのか、また何がリスクを高めるのかといった情報は、多くの人にとって関心度の高いものだと思います。なので、これまで様々な情報が飛び交い、中には全く科学的根拠や有効性のない情報に振り回されて、ライフスタイルを変容させてしまう人がでてきたり、悪質な商品が販売されて消費者問題を引き起こしたりというようなこともありました。メディア・リテラシーの重要性が強調されている時代ですが、がんについても科学的な根拠が示された情報であるか、また信頼できる情報源かといった観点で、情報の真偽を判断することが求められます。ちなみに私もこのブログを書くために、いくつかの文献や資料を参考にしていますが、研究データや出典を明記している専門書(比較的平易な表現で書かれたものもあります)、それからインターネットで検索できるものとして国立がん研究センターの「がん情報サービス」などを信頼性の高いものとして利用しています。
 というわけで、ずいぶん前置きが長くなってしまいましたが、今回は国立がん研究センターが2011年1月に公開した「日本人のためのがん予防法」の記述をもとに、国際機関や他国で評価されたがんの予防要因,リスク要因についてお伝えしたいと思います。
がんと生活習慣のかかわりについては、世界保健機構(WHO)や国際がん研究機構(IARC)などによって組織された委員会で、どのような要因がどの程度がんに対してリスクとなるのか、また予防に有効なのかについて討議されています。評価については「確実」,「可能性大」,「可能性あり」,「証拠不十分」というランク付けで示されていて、「確実」という評価は、複数の疫学研究で一致した成績が示されたもののみに付けられています。WHOが2003年に発表した「食物,栄養と慢性疾患の予防」と題する報告書と、IARCによる「たばこに関する評価の結果」を加えた概要は以下のような状況です


■「確実」と判定されたもの
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■「可能性大」と判定されたもの
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■「可能性あり/データ不十分」と判定されたもの
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次に、世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)によって2007年に改訂された「食物・栄養・身体活動とがん予防」という評価報告書による判定は、下表のような状況です。

■「確実」と判定されたもの
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■「可能性大」と判定されたもの
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WCRFとAICRの判定では、赤肉と加工肉について大腸がんのリスクを「確実に上げる」としている点が目に付きます。私などは、肉の脂肪がカロリーと飽和脂肪酸の点であまり良くないと思い、できるだけ脂身の少ない赤身の肉を日頃から購入するようにしているので、ちょっとショックです。ただ、赤肉も日常的に多量に食べると問題なのであって、野菜炒めに少し使うとか、たまに焼き肉を食べる程度のことでビクビクする必要はないと思います。ハムやベーコンなどの肉の加工品には、発色剤として亜硝酸塩が使用されており、体内のたんぱく質に由来する二級アミンという物質と化学反応を起こしてニトロソ化合物(発がんリスクを上げる)を生ずるので、こちらの方をむしろ避けたい感じがします。現在市販されている肉の加工品のほとんどに亜硝酸塩は使用されていますが、中には不使用の商品もあります。私がいつも購入しているのは、信州ハムのグリーンマークの商品です。鮮やかなピンク色はしていませんが、カルシウムの吸収を邪魔する結着剤(ポリリン酸塩)も使用されていませんし、自然な風味で気に入っています。より多くの人が、そうした商品を買い求めるようになると、他社でも生産をするようになり、より安価でよい商品が手に入るようになるかもしれませんね。
そのほか、両者の判定に共通して「発がんのリスクを下げる可能性が大きい」とされているのが、野菜や果物です。厚生労働省が掲げる「健康日本21」でも、1日350~400gの野菜の摂取を推奨していますが、食に対する意識やスキルの乏しい人、あるいは多忙で食事の準備にあまり時間と労力がかけられないような人が、どうしたら十分に野菜を食べられるようになるかということが、これからの重要な課題になるでしょう。
今回はずいぶん分量が多くなってしまいましたが、次回はがんの締めくくりとして、日本人に即したがんの予防法についてまとめてみたいと思います。