がんに効く食べ物はあるのか?

前回は、魚油の構成成分であるn-3系不飽和脂肪酸の肝臓がんに対する効用について書きましたが、このほかにも発がんの予防効果が報告されている食品成分がありますので、そのいくつかを列記してみましょう。

■スルフォラファン(sulforaphane)
ブロッコリー,カリフラワー,芽キャベツなどに含まれる有機硫黄化合物。
発がん性物質を解毒する酵素を活性化するとされる。

■レスベラトロール(resveratrol)
ブドウの果皮に含まれるポリフェノールの一種。
抗酸化作用と抗炎症作用があり、骨髄性白血病などに対して有効であるとされる。

■クルクミン(curcumun)
カレーのスパイスであるウコンの黄色色素。
事前に発がん物質を投与されたマウス、0.2%のクルクミンを添加した食餌を与えたところ、大腸癌の発症において有意な減少が見られたとの報告がある。

■ボウマン・バーク プロテアーゼ インヒビター
(Bowman-Burk protease inhibitor

大豆に含まれるアミノ酸60~80のポリペプチド(分子量の小さいたんぱく質)。
たんぱく質分解酵素トリプシン,キモトリプシンの作用を阻害し、発がん抑制およびがん転移抑制に効果が期待されている。

■カテキン (catechin)
茶葉に含まれるポリフェノールで、有効成分はエピガロカテキンガラート(epigallocatechin gallate)。
閉経前の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりやすい傾向を認めた一方、閉経後の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりにくい傾向がみられたとの報告がある。

このように、これまでいくつもの栄養素や食品成分が、がんの予防もしくは治療に有効だということで注目されてきました。
ところが、それらの中には後日その効果が撤回されたものもありました。その一例が大腸がんの予防をするといわれていた食物繊維です。食物繊維の大腸がん予防に対する効果については、かつて高校で使用していた教科書にまで記載されていて、私も授業で取り上げていました。ところが数年前、その後の調査・研究の結果、そのような効果は認められなかったとの見解が発表され、唖然としてしまったという経験があります。β-カロテン*に関しても、発がん予防効果があるとされていましたが、フィンランドで肺がんの発がん率を調査したところ、肺がんが少ないと予想されたβ-カロテンを投与したグループの方が、18%も発がん率が高い結果が出たという報告がなされました。さらに最近では、β-カロテンを必要以上に摂取することは、むしろ危険だとの見解も出てきています。


*カロテン(Carotene)とは…
  植物によって生合成されるカロテノイドの一種。
  ニンジンやカボチャなどに含まれる橙黄色の色素で、カロテンの名称も
ニンジンのCarrotに由来する。主にα-,β-,γ-の3種があり、体内で
ビタミンAの効力を発することからプロビタミンAと呼ばれる。
特にβ-カロテンは、2つのレチニル基(ビタミンA)から構成され、小腸の
粘膜中でレチナールに分解された後、ビタミンA(レチノール)となるため、
カロテンの中でもビタミンAとしての利用効率が高い




このような事例を見るにつけても、がんの有効性に確証のある物質など存在するのだろうかと思ってしまいます。冒頭に記述した、がんに有効だとされている食品成分も、ひょっとしたらこの先評価が変わってしまうかもしれませんよね。なので、高額なサプリメントなどを買ったり、特定の食品ばかり食べたりして極端に摂取するより、カレーの付け合わせにブロッコリーのサラダと豆乳のスープ、食後はお茶を飲みながらデザートにブドウをいただくというような具合に、普通の食事を摂ることの方が賢明なのではと思うのですが、いかがなものでしょうか?