肝臓がんと魚食(n-3系不飽和脂肪酸の効果)

2ヶ月ほど前に国立がん研究センターは、多目的コホート研究の結果から、青魚やウナギに多く含まれているn-3系不飽和脂肪酸(EPA,DHAなど)*を多く摂っているグループほど肝がんの発生リスクが低いことを発表しました。肝がんの多くはB型・C型肝炎ウイルスの感染者から発生しますが、肝炎ウイルス陽性者に限った解析結果からも、同様に肝がんリスクの低下がみられたということです。

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n-3系不飽和脂肪酸とは・・・
脂肪(あぶら)を構成する脂肪酸の一種。分子構造上、n末端(オメガ末端)から3番目の位置に最初の二重結合のある脂肪酸の総称。体内で作ることができず、食物から摂取しなければならない必須脂肪酸。EPA(エイコサペンタエン酸),DHA(ドコサヘキサエン酸)は、体内でα-リノレン酸から合成されるとされているが、その変換率は10~15%程度といわれている。


n-3系不飽和脂肪酸には抗炎症作用やインスリン抵抗性*を改善する作用があることから、B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の症状を緩和したり、糖尿病や肥満によるインスリン抵抗性を改善したりすることが、肝がんのリスクを低下させる理由ではないかとしています。(近年、糖尿病や肥満が肝がんのリスクをあげることが報告されています。)


インスリン抵抗性とは・・・
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇を抑える作用があるが、遺伝的要因と過食による肥満,運動不足およびストレスなどによってインスリンの作用が現れにくくなる(インスリン感受性の低下)ことを「インスリン抵抗性」いう。2型糖尿病をはじめ高血圧,脂質異常症,動脈硬化症などの生活習慣病の発症に深く関わるとされる。


n-3系不飽和脂肪酸のEPAやDHAについては、かねてから血栓症の予防や脳神経細胞のはたらきに関与する作用(頭が良くなるなどといわれていますね)が認められ、近年ではうつ病との関連性について研究が進められているなど、現在最も注目されている栄養素と言ってもよいでしょう。なので、これらについてはまた後日、基本的な部分からきちんと説明したいなと思っています。
数ある食材の中でEPAやDHAを含むのは、n-3系不飽和脂肪酸をつくる海の植物性プランクトンを食べている魚類(イワシ,サンマ,サバ,マグロのトロ,サケ,サワラ,ブリなど)だけです。体内でEPAやDHAになる可能性のあるα-リノレン酸は、シソ油,エゴマ油,亜麻仁油などに多く含まれています。ただこれらのn-3系不飽和脂肪酸は、分子の構造上二重結合が多いために酸化されやすいという弱点もあります。酸化されたものは過酸化脂質といって、体に悪影響をおよぼします。なので、魚類は鮮度の良いうちに食べるようにしたり、シソ油などは小瓶のものを購入し、冷蔵庫で保管して早く使い切るようにするとよいでしょう。
ところで最近、食の簡便化などの影響で日本人の魚離れが進んでいるとの話を耳にしましたが(下図参照)、n-3系不飽和脂肪酸を良い状態で摂取するという観点からすると、魚なら刺身のように新鮮なものを生食する方が望ましいですし、シソ油などは加熱せずにそのままサラダにかけて食べるというのがベストです。つまり調理の手間をかけない方がよいということなので、食の簡便化にはマッチしているともいえます。あまり難しく考えずに、n-3系不飽和脂肪酸を摂る工夫をしてみましょう。

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資料 / 水産庁 「平成22年度水産白書 (水産物の消費動向)」より