日本人のがんの要因について

厚生労働省が今年1月に発表した「2011年 人口動態統計の年間推計」によると、悪性新生物(がん)による死亡数の推計は35万8,000人で、1981年に脳血管疾患を抜いて以来、死因の第1位となっています。ちなみに、1980年のがんによる死亡数は16万1,764人ということでしたから、30年間で倍以上増加したことになります。このようにがんによる死亡が増え続ける理由として、ある専門家は「日本人が長生きするようになったから」とおっしゃっています。確かに加齢が、がんの最大要因であることは理解できますが、最近問題視されている事例で、印刷会社の従業員にインクの洗浄剤が原因と思われる胆管がんが発症している例などをみますと、発がんには加齢や遺伝的素質のほかに様々な環境的要因が関係していることが察せられます。また、逆に言えば、生活する上で何らかの配慮や努力をすれば、がんに罹ることを避けられるのではとも考えられます。
そこで、がんにかかわる要因について記述しているいくつかの資料・文献に目を通してみましたところ、2011年10月に国立がん研究センターのがん予防研究班が公開した「日本におけるがんの原因」という報告の中で、日本では男性のがんの55%(がん発生については53%,がん死については57%)、女性ではおよそ30%(がん発生28%,がん死30%)は予防可能なリスク要因によるものとの記載がありました。さらに、日本人のがん発生についてPAF(population attributable fraction ,人口寄与割合:がんの発生またはがんによる死亡について、あるリスク要因がなかったとすると、どのくらいがんの発生および死亡が減るのかを示した値)の大きかったものが下表のように示されており、男女総合では喫煙(能動)と感染性因子(C型肝炎ウイルス,ピロリ菌など)がともに20%前後で突出していること、そして飲酒が6%程度で3番目に大きいリスク要因となっていることがわかります。
その他の要因として、塩分摂取,果物摂取不足,野菜摂取不足,過体重・肥満など、食生活や栄養状態に関する項目が挙げられていますが、いずれもそれほど高い数値ではなく、欧米の推定と比較してはるかに小さい値であるとしています。このことに関して、日本人の食生活がもともと健康的であり、日本人には極端な肥満(BMI30以上)の割合が少ないことを理由としていますが、これだけで日本人の食生活が、がんに対してあまり問題がないとしてしまうのは、早計な感じがします。一口に日本人の食生活といっても個人差がありますし、研究の視点が塩分,野菜,果物と限られていること、さらに栄養状態に関しては、日本人には「やせ」の人が多く、「やせ」とがん発生の相関についても調査する必要があると思います。
がんは「生活習慣病」に位置づけられており、食生活は生活習慣の中でも大きなウエイトを占めています。現に、特定の食品や食品成分に抗がん作用あるいは発がん性があるとして大々的に取り上げられたり、健康食品として高値が付けられていたりする場面にしばしば遭遇します。しかし、それらの情報にむやみに踊らされて、いわゆるフードファディズムに陥ることのないよう、情報の信頼性を十分にチェックし、冷静に受け止める姿勢が必要です。というわけで、次回はがんと食生活の関係について、具体的な事柄をまとめてみたいと思います。


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