やせた女性と骨粗しょう症

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4月29日の朝日新聞朝刊一面トップに『赤ちゃん細る一方 妊婦のやせすぎ一因・・・』という記事が掲載されていました。新生児体重が30年以上減り続け、最も多かった1980年と比べると250g減っており、その主な原因は、妊婦がやせていたり妊娠中の体重増加を抑えたりすることにあり、若い女性のスリム志向や「小さく産んで大きく育てる」という妊婦教育,妊婦の高年齢化などの影響が指摘されていました。さらに『出生時体重が少ないと将来、糖尿病や高血圧といった生活習慣病などのリスクが高まるとの疫学研究が欧米を中心に次々報告されている。』という、とても気がかりな記述もありました。この記事を読みながら、20年ほど前に何人かの妊娠中の友人から「体重増加にとても指導が厳しい」という旨の話を聞いたことを思い出し、やはり極端な方法にはなんらかの反動があるものだな、などと考えておりました。
  ところで、やせの女性は前回のブログで触れた骨粗しょう症になるリスクも高く、今回は体重と骨粗しょう症との関係について少し詳しく述べたいと思います。
下のグラフ(図1)は、少し古いデータですが、若い女性のダイエット回数と低骨密度者の割合を示したものです。ダイエット回数が多くなるほど低骨密度者の割合が高く、この理由としては低体重のほか、骨の健康維持に必要なカルシウムやたんぱく質などの栄養素不足が考えられますが、若年者であっても悪条件下では骨の状態が悪化することがわかります。

図1
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広田孝子ほか/小児・成長期の栄養・運動と骨粗鬆症81(7);768-774、1992より


次の図2は、中高齢女性の体重と骨密度低下リスクを示したものです。骨粗しょう症は女性ホルモンとの関係が深く、閉経後の女性は男性の4倍以上もかかりやすいといわれていますが、このグラフを見ますと体重も大きく関与していることがわかります。

図2
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FOSTA(骨粗鬆症リスク評価ツール)=[体重(kg)-年齢(歳)]×0.2


骨の状態維持には重力による負荷が必要で、2009年に宇宙飛行をした若田光一さんは、微小重力による骨密度低下を防ぐための研究をされていました。微小重力の環境下では、健康体であっても、高齢の骨粗しょう症患者の約10倍の速さで骨のカルシウムが血中や尿中に溶け出してしまうため、若田さんは宇宙に滞在している間、骨粗しょう症治療薬ビスフォスフォネートを服用してその効果を確かめていました。地上でも寝たきりの状態では骨に負荷がかからず、宇宙の微小重力環境と同じだそうです。また、体重が軽いということは、日常生活の中で骨に負荷がかかりにくい状態であるということで、これがやせた女性に骨粗しょう症が起こりやすい理由です。冒頭で触れた体重増加を抑えた出産経験のある女性が、順次更年期を迎えつつありますが、近い将来、女性の骨粗しょう症の発症率が高くなったというような事態にならないことを祈りたいです。
体重の軽い人が効果的に骨に負荷を与える方法は、ランニングや跳躍などの運動です。体を支えるためには骨と筋肉が重要ですが、運動すれば同時に筋肉も鍛えることができますので、これこそ一石二鳥です。食事を摂らずにやせるという方法は、悪循環を招くのみですが、食事を摂って動けば、太らず健康も維持できて良いことずくめです。食事も運動も毎日少し心がけることで、将来の人生が変わります。できるだけ早い時期から対策を始めましょう。