「やせ」と健康上の諸問題

世界を悩ます「肥満」は、糖尿病,高血圧症,脂質異常症,動脈硬化症,血栓症,がんなど、数多くの疾患の危険因子となるといわれていますが、では「やせ」*にはそうした問題はないのでしょうか。


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前々回のブログで、日本では若い女性を中心に「やせ」の人が増加している実態について書きましたが、上図を見るとおわかりのように、日本の「やせ過ぎ女性」の比率は先進諸国としては異例と言っていいほど高い状況です。「やせ」にもいろいろなケースがあるので一概には言えませんが、「ダイエット」と称してむやみに食事の量や内容を制限したような場合は、体に必要ないくつもの栄養素が不足したり、食欲を抑えることで精神的なストレスを抱えたりすることが考えられます。こうした心身にかかる負担によって、具体的にどのような支障が現れてくるのか、主なものを列記してみましょう。

1.感染症に対する抵抗力が低下する。(免疫機能に必要な抗体が作られにくくなる)
2.心身の活力が低下する。(慢性的なエネルギー不足のため)
3.排卵障害や無月経になる。(体脂肪が減少すると卵巣機能の低下,低エストロゲン状態に陥る)
4.骨粗しょう症になりやすくなる。(低体重によって骨に重力の刺激がかかりにくくなる)
5.過食や拒食などの摂食障害に陥ることがある。(ストレスが摂食行動に異変をもたらす)
6.妊娠中の女性の低栄養は、胎児の健康に影響を及ぼす。

私たちの体は、複数の栄養素が連係して機能することによって支えられていますので、ただ一つの栄養素が不足しただけでもさまざまな支障が出てきますし、運動や休息,ストレス,飲酒・喫煙などのほかの生活習慣とも密接な関係があります。


このほか中年期の5年間に体重が5kg以上減少または増加すると死亡率が増加するという研究報告もあります。国立がん研究センターの多目的コホート研究班が中年期の体重変化とその後の死亡との関連について検討したところ、5年間に体重があまり変化しなかった(2.4kg以内)群と比べて、5kg以上減少もしくは増加した群で男女ともに総死亡のリスクが1.3~1.7倍に上昇しており、特に体重が5kg以上減少した群で死亡のリスクが最も高く、がん死亡のリスクは男女ともに1.5倍、循環器疾患死亡のリスクは、女性の5kg以上増加した群で1.9倍に上昇したという研究報告をしています。(下図参照)

中年期以降、大幅に体重が減少するケースの理由としては、がんや糖尿病など他の病気が関係しており、それが寿命を縮めているということも考えられますが、いずれにしても中高年以降の体重の増減と寿命の間には相関があるようです。ただ中高年の健康状態は、長期間の生活習慣の積み重ねによるものとも言えるので、やはり若いうちから無茶をせず、食生活をはじめとする生活習慣に配慮しながら過ごすことが大切なのだといえるでしょう。


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国立がんセンター 多目的コホート研究(JPHC Study)成果より