ダイエット志向とフードファディズム

先月、京都大の研究グループが、トマトの中に体内の中性脂肪を減らす働きのある成分があることを発見したと発表しました。その物質は「13-○X○-ODA」という脂肪酸の一種で、脂肪を燃焼させる遺伝子を増やす効果があり、トマトの中でリノール酸*から生成されるとのことです。人間ではトマトを1日6個、トマトジュースなら1日3回200mlずつくらい摂れば効果がみられるのではということなので、長期的に実行するのは少々ハードルが高い感じがしますね。


※リノール酸とは…
n-6系の不飽和脂肪酸で、人間の体内で合成できず体の成長や健康維持に必要な必須脂肪酸の一つ。リノール酸から生成されるアラキドン酸が、血液の凝固や血管の収縮といった生理機能に関与することなどから、近年では血栓症予防の意味で、n-3系脂肪酸(α-リノレン酸,EPAなど)とのバランスが大切といわれている。



ところで、私はこの報道を耳にした後、「トマトが買えなくなるのでは」という一抹の不安を覚えました。というのも過去に納豆やバナナが突如売り場から姿を消し、2~3週間とても不自由な食生活を強いられたことがトラウマとなっているからです(笑)。その原因は、いずれも納豆やバナナのダイエット効果を強調したTV番組が報道されたことでした。このような現象は「フードファディズム(特定の食べ物や栄養素が体に与える影響を過大に評価したり信じたりすること)」といわれ、語源のfadには「一時的な熱中,気まぐれな流行」という意味があります。今回のトマトの場合、ニュース記事として簡潔に扱われたので、かつてのような極端な現象は起きていませんが、今後効果を誇張するような番組が放送されたりすると、また悪夢が繰り返されるかもしれませんね。それにしても「ダイエット」「やせる」という情報に、かくも多くの人が操られている状況を見ますと、日本人のやせ願望・ダイエット志向の強さを思い知らされます。

ダイエット(diet)の本来の意味は「食物」ですが、不健康な状態にある人を健康な状態にするために行う食事療法、あるいは健康状態を維持するために行う食事制限を表す言葉でもあります。前回のブログで触れましたように、先進国では軒並み肥満者が増加している実態がありますので、「やせて健康体になる」という意味で「ダイエット」という言葉を使うケースが圧倒的に多いということなのですが、日本では特に女性を中心に「やせる → 美しくなる → 幸せになれる」という思考回路を表現する便利な言葉として定着してしまった感があります。いずれにしてもダイエットは、基本的な栄養学の知識を踏まえた食事管理と運動などを組み合わせて行われるべきもので、つまりそれなりに手間暇がかかるわけです。ところが日本でブームになるようなダイエット法は決まって「○○するだけ」「○○を食べるだけ」といった、面倒なく成果が得られると思いこませるような表現をして、人々の注目を集めようとしています。実際にはそうした諸説の信憑性については、甚だ疑わしいものがあるわけですが、「簡単で効果的」というイメージに多くの人が乗せられてフードファディズムに陥ってしまうのです。
現在ダイエット目的以外にもコエンザイムQ10,コラーゲン,ヒアルロン酸,コンドロイチンなど数々の物質がサプリメント・健康食品としてドラッグストアなどで売られており、先日報道のあった「13-○X○-ODA」なる物質も、近い将来仲間入りするかもしれません。これらの物質の効能については、プラシーボ効果を含めてすべて否定するわけではありませんが、過信して摂りすぎたり、他の栄養素とのバランスを欠いたりするような事態は避けたいものです。「○○を飲むだけ、食べるだけ」のような「うまい話」にはどうかご用心を。